最強コスパAIはどれ? OpenRouter Benchmarksで見るLLM勢力図【2026年8月9日】

AIモデルを選ぶうえで重要なのは、性能と価格のバランスです。
どれほど高性能でも、価格が高すぎれば日常的には使いにくくなります。反対に、安価なモデルであっても、同じ価格帯にもっと高性能な選択肢があれば、選ばれにくくなります。
AIベンダー各社は、性能と価格の両面で熾烈な競争を続けています。
そこで本記事では、「今日の最強コスパAIはどれだ?」という、少しエンタメ寄りの視点でOpenRouterのBenchmarksを眺め、2026年8月9日時点のLLM勢力図を見ていきます。
先に結論を言うと、性能面の王者はClaude Opus 5です。しかし、価格まで含めた「コスパ王者」は一つに決まりません。価格帯ごとに、異なる7モデルがパレートフロンティアを構成しています。
今回の「最強AI」のルール
「最強AI」の定義は、用途によって変わります。コーディング、文章作成、日本語、ツール利用など、評価軸を変えれば結果も変わるからです。
実際、OpenRouterのBenchmarksでは、Artificial Analysisの評価軸として次の3指標を選択できます。
- Intelligence Index Score
- Coding Index Score
- Agentic Index Score
本記事では、分野を限定しない総合指標としてIntelligence Index Scoreを選びます。Coding Index ScoreやAgentic Index Scoreを選べば、パレートフロンティアの顔ぶれも変わります。
今回は少々乱暴に、性能が高く、実際に使ったときの平均費用が安いモデルほど強い、というルールにします。
- 縦軸:Artificial Analysis Intelligence Index(高いほど高性能)
- 横軸:Avg Price Per 100 Requests(左へ行くほど安い)
- 表示:Show Paretoを有効化
つまり、「100回使う費用」と「総合的な賢さ」を組み合わせた、最強コスパAI決定戦です。
OpenRouterのBenchmarksとは
ベンチマークとは、複数のAIモデルを同じ条件で評価し、性能を比較するための共通テストや評価指標です。
OpenRouterのBenchmarksは、OpenRouterがすべてを独自に採点した単一のテストではありません。Artificial AnalysisやDesign Arenaなどの評価結果と、OpenRouter上の価格・利用データを組み合わせ、モデルを比較できるようにした機能です。
グラフの見方
Artificial Analysis Intelligence Index
Artificial Analysis Intelligence Indexは、推論、科学、コーディング、長文理解、指示追従、エージェント型タスクなど、複数の評価を統合した総合指標です。数値が高いほど、この指標上では総合的な能力が高いことを示します。
ただし、評価項目や配点はバージョンによって変わります。スコアを比較するときは、数値だけでなく、評価バージョンと計測時点も確認する必要があります。
Avg Price Per 100 Requests
Avg Price Per 100 Requestsは、OpenRouter上で観測された平均的なリクエスト価格を、100リクエスト分に換算して表示する指標です。グラフの単位は「ドル/100リクエスト」で、左へ行くほど平均費用が安くなります。
入力単価だけを比べる指標ではないため、「実際に100回使うと、平均でどの程度の費用になるか」という感覚をつかみやすいのが利点です。
ただし、これは同じ100個の質問を全モデルに与えた実験結果ではありません。モデルごとに、実際に使われているプロンプトの長さ、出力の長さ、用途、推論量、キャッシュ利用率などが異なります。また、OpenRouterの画面では集計期間や詳しい計算式が明示されていません。そのため、純粋な料金表というより、OpenRouter上の利用実態を反映した「観測上の平均コスト」と考えるのが適切です。
「Show Pareto」とは
「Show Pareto」を有効にすると、パレートフロンティアが点線で表示されます。
今回のグラフでは、「性能は高いほどよい」「100リクエスト当たりの平均価格は安いほどよい」という2つの条件を同時に評価します。
あるモデルよりも「スコアが高く、しかも価格が安い」別のモデルが存在する場合、前者は後者に支配されていると考えます。反対に、そのような上位互換のモデルが存在しない選択肢がパレート最適です。それらを結んだ線が、パレートフロンティアです。
パレートフロンティアは、各価格帯で得られる最高スコアを結んだ線です。線上のモデルは、この2軸では最も条件のよい選択肢です。
ボクシングに階級があるように、AIにも「超低価格級」「中価格級」「プレミアム級」があります。安さを優先する人と、費用をかけてでも最高性能を求める人では、最適なモデルが異なるため、パレートフロンティアには複数のモデルが並びます。
※線より下にあるモデルでも、応答速度、日本語性能、出力品質、得意分野、コンテキスト長、ツール対応、安定性などによっては、十分に選ぶ価値があります。
2026年8月9日の最強コスパAIは?

パレートフロンティア上に残ったのは、次の7モデルです。価格が高い順に並べています。
| 総合順位 | モデル | 開発元 | Index | 平均価格/100リクエスト |
|---|---|---|---|---|
| 1 | Claude Opus 5 (Adaptive Reasoning, Max Effort) | Anthropic | 63.1 | $14.10 |
| 3 | GPT-5.6 Sol (max) | OpenAI | 60.9 | $6.27 |
| 4 | Kimi K3 (max) | Moonshot AI | 59.7 | $5.45 |
| 5 | Qwen3.8 Max | Qwen | 58.1 | $4.21 |
| 7 | GPT-5.6 Terra (max) | OpenAI | 56.6 | $1.90 |
| 12 | Muse Spark 1.1 (xhigh) | Meta | 53.2 | $1.07 |
| 15 | GPT-5.6 Luna (max) | OpenAI | 52.3 | $0.16 |
価格は小数第3位を四捨五入しています。また、この値は利用状況によって変動します。
7階級の王者を見てみる
絶対王者:Claude Opus 5
Intelligence Indexは63.1で、今回の20モデル中トップです。100リクエスト当たりの平均価格は14.10ドルと高価ですが、「費用をかけてでも最高性能を選ぶ」というプレミアム級の王者です。
興味深いのは、総合2位のClaude Fable 5です。スコアは62.1ですが、平均価格は44.56ドル。Claude Opus 5のほうが高スコアかつ大幅に安いため、Fable 5はパレートフロンティアから外れます。総合2位でも「コスパ王」にはなれない、パレートの厳しさが表れています。
高性能帯:GPT-5.6 Sol、Kimi K3、Qwen3.8 Max
この価格帯では、GPT-5.6 Sol、Kimi K3、Qwen3.8 Maxがきれいな階段を作っています。
- GPT-5.6 Sol:60.9/6.27ドル
- Kimi K3:59.7/5.45ドル
- Qwen3.8 Max:58.1/4.21ドル
少し費用を足せば、少し高いスコアを得られる関係になっており、どれか一つが他を完全に上回ってはいません。Kimi K3とQwen3.8 Maxは、最高性能帯に迫りながら価格を抑えたモデルとして目立ちます。
中価格帯:GPT-5.6 TerraとMuse Spark 1.1
GPT-5.6 Terraは1.90ドルで56.6、Muse Spark 1.1は1.07ドルで53.2です。高性能モデルを常用するほどの予算はかけられないものの、一定以上の性能が欲しい場合の候補になります。
Muse Spark 1.1って何者? 本当にMeta製だった
表を見ていて、「Muse Spark? 開発元がMeta?」と驚きました。調べてみると、Muse Spark 1.1はMeta Superintelligence Labsが開発した、エージェント型タスク向けのマルチモーダル推論モデルです。
Meta AIアプリとmeta.aiの「Thinking」モードで使われているほか、ツール利用、コンピューター操作、コーディング、画像や動画の理解などに対応しています。Metaのサービスやデバイスだけに閉じたモデルではなく、外部開発者向けのMeta Model APIでも公開プレビューとして提供されています。
参照:Introducing Muse Spark 1.1(Meta公式)
Grok 4.5は「ほぼ線上」だが、惜しくも圏外
Grok 4.5はIndex 55.8、平均価格は1.99ドルです。一見するとかなり健闘していますが、GPT-5.6 TerraはIndex 56.6、1.90ドル。Terraのほうが高スコアかつ安いため、この2軸ではGrok 4.5がTerraに支配され、パレートフロンティアには入りません。
GPT-5.4はIndex 53.1、平均価格1.54ドルです。Muse Spark 1.1のほうがスコアが0.1高く、価格も安いため、GPT-5.4はパレートフロンティアに入りません。
超低価格級:GPT-5.6 Luna
GPT-5.6 Lunaは、100リクエスト当たり0.16ドルでIndex 52.3。パレートフロンティアの最安側を担うモデルです。絶対性能では15位ですが、費用を最優先するなら非常に強い選択肢に見えます。
DeepSeek V4 Flashが線上にいない理由
DeepSeek V4 Flash 0731は、Index 51.8、100リクエスト当たり約0.17ドルです。一方、GPT-5.6 LunaはIndex 52.3、約0.16ドル。Lunaのほうがわずかに安く、しかもスコアが高いため、この2軸ではDeepSeek V4 FlashがLunaに支配されます。
Intelligence Index上位20モデル
同日時点の上位20モデルを、100リクエスト当たりの平均価格とともに並べると、次のようになります。「Pareto」が、このグラフでパレートフロンティアを構成するモデルです。
| 順位 | モデル | 開発元 | Index | 平均価格/100リクエスト | Pareto |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | Claude Opus 5 (Adaptive Reasoning, Max Effort) | Anthropic | 63.1 | $14.10 | ● |
| 2 | Claude Fable 5 (Adaptive Reasoning, Max Effort, Opus 4.8 Fallback) | Anthropic | 62.1 | $44.56 | — |
| 3 | GPT-5.6 Sol (max) | OpenAI | 60.9 | $6.27 | ● |
| 4 | Kimi K3 (max) | Moonshot AI | 59.7 | $5.45 | ● |
| 5 | Qwen3.8 Max | Qwen | 58.1 | $4.21 | ● |
| 6 | Claude Opus 4.8 (Adaptive Reasoning, Max Effort) | Anthropic | 57.3 | $12.10 | — |
| 7 | GPT-5.6 Terra (max) | OpenAI | 56.6 | $1.90 | ● |
| 8 | GPT-5.5 (xhigh) | OpenAI | 56.3 | $6.17 | — |
| 9 | Grok 4.5 (high) | xAI | 55.8 | $1.99 | — |
| 10 | Claude Sonnet 5 (Adaptive Reasoning, Max Effort) | Anthropic | 55.3 | $3.17 | — |
| 11 | Claude Opus 4.7 (Adaptive Reasoning, Max Effort) | Anthropic | 55.0 | $8.77 | — |
| 12 | Muse Spark 1.1 (xhigh) | Meta | 53.2 | $1.07 | ● |
| 13 | GPT-5.4 (xhigh) | OpenAI | 53.1 | $1.54 | — |
| 14 | GLM-5.2 (max) | Z.ai | 52.6 | $2.88 | — |
| 15 | GPT-5.6 Luna (max) | OpenAI | 52.3 | $0.16 | ● |
| 16 | Gemini 3.5 Flash (high) | 52.0 | $1.98 | — | |
| 17 | DeepSeek V4 Flash 0731 (Reasoning, Max Effort) | DeepSeek | 51.8 | $0.17 | — |
| 18 | Gemini 3.6 Flash (high) | 51.6 | $1.67 | — | |
| 19 | Claude Sonnet 4.6 (Adaptive Reasoning, Max Effort) | Anthropic | 48.4 | $3.17 | — |
| 20 | Gemini 3.1 Pro Preview | 47.7 | $3.27 | — |
このランキングの弱点
Avg Price Per 100 Requestsは直感的で面白い指標ですが、モデルごとに実際の使われ方が異なります。高性能モデルには難しく長い仕事が集まり、低価格モデルには短い処理が集まっている可能性があります。その場合、価格差にはモデル自体の単価だけでなく、利用用途の違いも含まれます。
そのため、これは「同じ仕事を100回させた場合の厳密な料金比較」ではなく、OpenRouter上での利用実態を含んだスナップショットです。本当に自分の用途で最適なモデルを決めるには、同じプロンプトとデータを使い、成功率、総費用、応答時間を実測する必要があります。
まとめ
2026年8月9日時点の絶対性能トップはClaude Opus 5でした。一方、「100回使う費用」と性能を組み合わせると、GPT-5.6 Sol、Kimi K3、Qwen3.8 Max、GPT-5.6 Terra、Muse Spark 1.1、GPT-5.6 Lunaを加えた7モデルが、それぞれの価格帯で王者になります。
最高性能だけを見るか、予算内で最高の性能を狙うか。それによって「最強」の答えは変わります。この答えが日々入れ替わることも、現在のLLM競争を眺める面白さです。
参考:OpenRouter Rankings/OpenRouter Benchmarks API/Artificial Analysis Intelligence Index v4.1
